11月30日(日)に次世代都市国際連携研究機構は、NTT東日本(次世代都市国際研究体)との共催、国土交通省関東地方整備局、栃木県、宇都宮市、東武鉄道株式会社の協力で次世代インフラデザインフォーラムを開催いたしました。(会場:栃木県立総合文化センター第1会議室)
シンポジウムの概要を下記の通り報告します。イベントの概要はこちらのページをご覧ください。

 

セッション1 インフラ維持管理の未来

基調講演 藤野陽三(城西大学・東京大学名誉教授) 橋を中心としたインフラの技術とマネジメント

本講演では、自身の研究生活を振り返りつつ、インフラマネジメントの重要性と将来の展望を語った。
学生時代、縦割りの学問体系に疑問を抱き、横断的な視点を持つ土木工学の道を選んだ藤野氏は、多くの橋梁プロジェクトに関わってきた。アメリカ・タコマ橋の崩落事故や自身が関与したロンドン・ミレニアム橋の振動問題などを例に挙げ、橋梁の維持管理における想定外への備えの重要性を説いた。インフラは一度作れば終わりではなく、機能維持のために継続的な点検と補修が必要であり、そのためには専門的な知識を持つ技術者の育成が不可欠であると強調した。また、インフラは「経済性・効率性・優雅さ」を備えるべきであり、地域社会や文化と深く関わるものであると述べた。
さらに、阪神・淡路大震災や東日本大震災での経験を踏まえ、構造物単体だけでなく、付属物や交通システム全体を含めた機能維持の視点が重要であると指摘した。
最後に、土木技術者は専門分野にとらわれず、多様な分野と連携し、社会課題の解決に向けてリーダーシップを発揮すべきであると訴えた。インフラは100年先を見据えて維持管理されるべきであり、それが技術者の生きがいにつながると結んだ。
 

水谷司(東京大学生産技術研究所 准教授) 地下インフラの三次元国土規模透視

本報告では、八潮の陥没や地下ガス爆発など近年多発する地下事故に言及後、その解決策として老朽インフラ管理への活用が期待される最新技術が紹介された。具体的には、高速走行車両にカメラやレーダー、LiDARを搭載し、地下の埋設物や空洞をリアルタイムで3次元地図化する研究だ。
また、藤野氏との議論では、人口減少社会でのインフラ維持への懸念がある中で、視点を世界に向けつつ、研究者自身が楽しむ姿勢が必要であることが結論づけられた。
 

大野元寛(東京大学大学院工学系研究科 特任講師) コンクリート材料技術とインフラ維持管理

本報告では、最新のコンクリート材料技術とインフラ維持管理の研究が紹介された。具体的には、マルチスケール解析によるコンクリート構造物のデジタルツイン構築。また、セメントを使用せずフライアッシュを用いた高耐久・低環境負荷の新コンクリートの開発や、3DプリンタでQRコードを埋め込んだコンクリートによる維持管理DX支援など、維持管理を技術革新で攻める事例を示した。
藤野氏との議論でも、若手人材の確保が課題の中では、攻めの姿勢で取り組む研究が学生を惹きつけると結論づけられた。

 

須賀理帆(東京大学大学院工学系研究科 博士課程) 道路劣化モデルと維持管理発注の最適化

本報告では、道路劣化モデルと維持管理発注の最適化という研究が紹介された。過去の修繕履歴や交通量データに基づき、交通量と修繕頻度の明示的でない交絡を取り除いた因果関係を学習する手法を提示した。さらに、メンテナンス時の交通規制による渋滞を考慮し、ネットワーク全体の混雑度を最適化する修繕計画の研究も進めている。
藤野氏とは、研究活動とそれを実務に繋げる際に必要な視点やスキルについて議論され、自身の専門分野を深め、「得意な分野」を持つことが重要であり、それが実務社会との連携やオリジナリティに繋がると結論づけられた。

 

セッション2 社会領域の持続可能性を目指して

河村英知(関東地方整備局 道路部長) 道路管理の現状と展望

本報告では、道路施設の老朽化を背景とした道路管理の現状と今後の展望について、国および自治体双方の視点から整理が行われた。建設後50年を超える道路橋は現在約4割であるが、2040年には約75%に達すると見込まれており、老朽化対策は喫緊の課題である。笹子トンネル事故を契機に法定点検制度が導入され、5年に1度の近接目視点検が実施されているものの、早期措置・緊急措置が必要と判定された橋梁の修繕完了率は国・自治体ともに約2割にとどまっている。背景には、限られた予算と技術者不足という構造的課題がある。対応策として、事後保全から予防保全への転換によるライフサイクルコスト削減、人口減少を見据えた施設の集約・統廃合、複数自治体が連携して管理を行う「群マネ」の推進が示された。また、AIカメラやドローンを活用した点検の省人化、路面下占用物件のデータベース化など、新技術とデータ活用による効率的なインフラマネジメントの重要性が強調された。

 

横尾元央(栃木県 県土整備部次長) 持続可能な社会基盤の形成

本報告では、人口減少・超高齢化、自然災害の頻発・激甚化、都市経営コストの増大といった社会情勢の変化を踏まえ、栃木県における持続可能な社会基盤形成の方向性が示された。県人口は2005年をピークに減少局面に入り、2050年には約150万人、うち約4割が高齢者となる見通しであり、特に山間部や県東部で人口減少が顕著である。加えて、近年は台風や豪雨による被害が頻発し、河川氾濫や土砂災害リスクの高い地域を抱えることが課題となっている。こうした状況に対し、栃木県では多核ネットワーク型の「スマート+コンパクトシティ」を掲げ、拠点集約と交通ネットワークの強化による効率的なまちづくりを推進している。さらに、耐震化や洪水対策、無電柱化、防災訓練、集団移転によるリスク分散など、ハード・ソフト両面から災害に強い都市構造の構築を進めている。インフラメンテナンス面では、長寿命化計画に基づく予防保全への転換や、道路照明のLED化ESCO事業による費用平準化と省エネルギー化を進め、行政・大学・県民が連携した持続可能なインフラマネジメントの重要性が強調された。
 

佐々木理(NTT-ME 社会インフラデザイン部長) 持続可能なインフラメンテナンスの実現に向けた取組み

本報告では、NTT東日本が保有する通信インフラの維持管理を題材に、担い手不足が深刻化する中での持続可能なインフラメンテナンスの実現方策が示された。NTT東日本は東日本エリアで電柱約567万本、通信ビル約3,000棟、光ファイバ約74万kmなど膨大な設備を抱え、老朽化・災害激甚化・ニーズ多様化に加え、技能労働者不足という課題に直面している。これに対し、スマートメンテナンス(DX)と業務集約(県→ブロック→全国)を進め、設備系人員が約42%減少する中でも品質を維持しつつ4割以上の効率化を達成した。さらに建設業の長期ビジョン2.0が示す2035年の人手不足を踏まえ、「新4K」実現に向けて一人当たり付加価値向上・現場サポート・多様な人材流入を柱に、①自治体との群マネや電力・ガスとの協業による多能工化(共同点検等)、②光ファイバセンシング等の遠隔常時モニタリングによる予兆検知(地中空洞検知)への展開、③MMS×AIによる点検のスキルレス化、④道路占用申請のデジタル化や点群データのシェアによる共同工事・道路管理DXを提案した。官学産連携の下で社会インフラ全体の持続性向上に貢献する姿勢が強調された。
 

田中成興(宇都宮市副市長) 道路・軌道空間の遷移と都市ビジョン

本報告では、道路空間とそれが形作る都市空間を時代の変化とともに再構築することをテーマとして、LRTの導入が行われた宇都宮市の道路・都市空間再編についてのビジョンが示された。江戸時代以来の放射状の道路ネットワークとそれをつなぐ戦後に建設された環状道路が広がる宇都宮市は、人口減少を前にNCC(ネットワーク型コンパクトシティ)を打ち出した。これは中心の都市拠点と周辺の地域拠点を階層性のある交通ネットワークで結ぶことである。これに基づいて渋滞緩和を目指し、市東部の工業団地と中心部を結ぶLRT、及びバス路線や道路整備、沿線再開発を一体的に行うことで、沿線地域の活性化を行っていることが説明された。同様に西側でも、中心市街地活性化を目指し、LRTの延伸に並行する再開発や都心環状道路の完成・バス路線整備が計画されている。これによりウォーカブルな中心市街地をLRTをはじめとする公共交通が貫く一方で、周辺には放射・環状道路が広がる階層的な都市構造を目指している。
 

越野晴秀(東武鉄道株式会社 経営企画本部課長) 鉄道まちづくりとインフラマネジメント

本報告では、日光・鬼怒川に向かう東武日光線と、県都に乗り入れる東武宇都宮線について、鉄道インフラ維持にとどまらない地域との共創によるシステム系の再構築の取り組みについて紹介された。東武日光線沿線では文化遺産の復元保全や経済活性化、東北復興支援を目指したSLの復活や、CO2排出量を40%低減させた新型特急スペーシアXの運行及び日光地区で使用する電気のCO2排出量0を実現するなど、カーボンニュートラルも含めた観光地としての魅力向上を行っている。東武宇都宮線では、地域団体や地場産業とのコラボ企画や、地元自治体と協力するフリーDay乗車券の配布など、地元に根差した活動を行っている。それとともに、自動運転・車載保線管理機器の設置・顔認証改札といった最新の技術導入も進めている。